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話したくて仕方が無い。 そんな表情でレミィは飛び込んできた。 久しぶりね、と言ってから私は本を閉じ、それから小悪魔に紅茶を二つ頼む。
レミィは私にアルバムを見せて、魔法は成功したわ、と極めて上機嫌に言った。 机の上の色褪せた写真の中に、見知った顔が微笑んでいる。 気休めに言ったものだったが、枕の下に入れておけば写真の夢を見る、というのが効いたらしい。 懐かしくも傍若無人な話が続く。 私はジト目を更に細めて、話の節に相槌を打ってあげた。 案外、こいつは寝ているんじゃないか、とか思われてそうだけど、別にそれでいい。 聞くことが目的で、話すことが目的なら、私は適当な所で頷いていれば寝ていても変わらないのだ。
紅茶が来る頃には、話は終わっている。 話したかったくせに、話し終えるとレミィは寂しそうな顔を見せる。 それで何かを失ったように、自信の無い顔に戻る。 レミィが紅茶に息を吹く。 猫舌であった咲夜の真似をする。 それがたまらなくて、私はレミィを促した。
別れの挨拶を無しに、レミィは扉を開けた。 暗い廊下に少しだけ背が高くなった友人の背が消えていく。 今夜、空に咲く十六夜の月が、彼女に再び良い夢を見せてくれることを私は祈った……。
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