出会いは、きっと最悪だった。
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<本文より抜粋> 「うちの神様方が、どうかしたんですか。洩矢様が帽子の裏にたまごをぽこぽこと産んだとか」 魔理沙は咄嗟に帽子を脱ぎ去って中身を確認したが、特に諏訪子の痕跡は見当たらなかった。心の底からほっとする。 「……もしそうだったら蛙狩神事な」 「はいどうぞ」 我関せずといった調子で、呑気にお茶を啜る。 「ただちょっと、おまえと神様がたの出会いを聞きたいと思ってな」 「出会い……」 ですか、と付け足すように早苗は言った。 彼女はしばし、遠い故郷の空を思い返すように宙を仰ぎ、お茶を飲むことも、息をすることさえ忘れているようだった。魔理沙は早苗の心情を察しようとして、自分と彼女の状況があまりにも異なることに気付き、下手な同情は避けるべきだと思った。安易に、人の気持ちがわかるなどと言うべきじゃない。けれども、わからないなりに付き合い方というものはある。 早苗は、思い出したようにお茶を啜り、ひとつ大きな息を吐いた。 「懐かしいなぁ……」 独り言のように呟く。その懐かしさに触れられないことが若干悔しいけれど、それは仕方のないことだ。早苗の思い出は、彼女と彼女にまつわる者たちにのみ実感できる、尊い幻想なのだから。 そのかわり、魔理沙にしか実感できない思い出も、きっとあるはずなのだ。そして今、魔理沙はそれを探している。 |
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『ハローグッバイ』
文:藤村流
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「ワンコイン、コンティニューはなしだ。久々に始めるとしようぜ」
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<本文より抜粋> 咲夜は窓から眼を引き剥がし、主に向けた。その小さな背中を痛ましい思いで見つめていると、 「咲夜」 不意に呼びつけられた。急いで襟を正す。 「なんでしょう」 「その目、やめなさい」 その声には、ここしばらくレミリアから欠落していた、強い意思が込められていた。威圧感を帯びた、冷厳たる響き。 「やめないのなら……あなたの運命をもらうわ」 ゆっくり、こちらを振り返る。その顔にはなんの表情もなく、ただ瞳に強い熱の色があった。 その紅い眼差しに、咲夜は一瞬、魅せられたように思う。 次の瞬間、紅い陽炎を視界に残し、レミリアの姿は掻き消えていた。 咲夜は反射的に空間把握能力を総稼働させている――いた、背後、すぐそこ。 しかし振り返るより早く、小さな手に銀髪をかき上げられ、露わとなった左の首筋に冷たい呼気を吹きかけられた。全身が凍りついたかのように固まってしまう。 凍てつきそうなほどに冷ややかで、しかしどこか甘く芳しい息が、うなじから耳たぶを撫でていく。やわらかな唇が、触れるか触れないかの微妙さで首の線を舐めていく。そしてついに、命脈の鼓動に口づけが施された。薄い皮膚一枚の下で、頚動脈がびくりと疼くような錯覚。 冗談だ。そう信じつつも、咲夜は戦慄を禁じえなかった。 「お戯れは……」 困惑気味に口を開けるのと同時、鋭い痛みが首筋を穿った。 |
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『エピローグ』
文:日間 |
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――――ある巫女と、ある魔法使いのお話。
表紙:SHO
『Epilogue』 5/25 第五回博麗神社例大祭ふじつぼ を26a 文庫 164p 価格 500円 委託 とらのあな メロンブックス
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