『晴るる虚空に醒めたゆめ』
  春告精と、移ろう季節の話。



 身を切るように冷たく強い風の中を苦労しいしいここまで来たのに。
 無駄骨折ったことに嘆息すると、それが聞こえたわけでもあるまいが、リリーホワイトがひょいとこちらを振り返った。
 ナズーリンのことを認めたその大きな瞳が一瞬、さらに丸くなって、それから彼女はあどけない造りの顔に柔和な笑みを浮かべた。
「ね、見て」
 ほっぺたを淡く紅潮させているのは、大気が寒いせいというより、昂揚のためらしい。
 白い妖精は風の冷たさにも負けない、温かみと弾みのある声を、ナズーリンの耳にまで届かせてきた。
「春を、見つけたよ」






 

 

 

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