『青く漣を染めて』
  大妖精と、友達の話。



 森の茂みをくまなく探る作業にも疲れ、腰を伸ばそうと空を仰いだら、そこに思いがけず目的のものを見つけてしまった。
「……みーっけ」
 枝葉の間から覗くうららかな陽射しに満ちた春空を、彼女、緑髪の妖精は目を細めながら見上げる。
 視線の先、遠い空の只中には、天空の色よりも濃い青をした小柄な影が浮かんでいた。
 のんびり気ままに空を泳ぐその様は、いかにも自分たち妖精の姿らしい。
 まったく、あの子は。あの様子じゃまた、私と遊んでたことも忘れてるな――
 緑髪の妖精、並の妖精よりも強い力を持っていることから一部の人間や妖怪の間で「大妖精」と称されている彼女は、溜め息まじりに背中の羽を大きく広げた。
 ふわりと風を巻いて浮かび上がると、木立に茂る若葉の間を潜り抜け、空へと翔けた。






 

 

 

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