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 1st day


 流星の軌跡を目撃したのは、人妖問わず結構いたらしい。
 流れ星は赤く燃え盛りながら妖怪の山に突き刺さって、幻想郷の隅々にまで届くような震動を未明の凍った大地に走らせた。

 まだ朝靄漂う冷ややかな薄明に、早くも黒山の人だかりができていた。
 妖怪の山七合目付近、九天の滝の轟きを耳にできる岩場へ、人妖が集っている。山林が乏しく開けた空間となっているそこには、昨夜まではなかったはずの巨大なクレーターが出現しており、そのへこみの中心には奇妙なモニュメントが斜め三十五度というきわどい角度で屹立していた。山を覆う雪も、その周辺だけは見事に吹き飛んで、黄土色の地肌が剥き出しとなっていた。
 クレーターを囲むそこかしこでは、ささやきと呼ぶには大きすぎる声が交わされている。
「あれが昨夜の流れ星だってさ」
「変わったお星様だねえ」
 まさに異形の星だった。最長部が二十メートルほどもありそうな、平べったくて、やや楕円にも近い細長い形状。その全体が頑丈そうな金属でできていて、ひどく歪んでしまってはいるが、それでもかつては滑らかな輪郭線を持ち、触れれば切れそうなシルエットを構築していたであろうことが伺える。空で身を焦がした名残だろう、黒く煤けているけれど、一部に好奇心旺盛な誰かが拭ったらしき部分があって、そこには鮮やかな青と白銀色とに塗り分けられた表皮が覗いていた。
 どう見ても自然の流れ星、隕鉄などではなく、人工の物体だった。
「……飛行機?」


   §


 2nd day


 魔理沙は苦い顔でうつむいた。顔は下に向けたままで、視線を鋭く持ち上げる。
「扉の用意されてない壁だ。となれば、やはり真っ向、ぶち破るしか道はない。弾幕は火力だぜ」
「火力で破れなかったくせに。マスタースパークとかでも無理だったんでしょ?」
「いや、ミニ八卦炉は持ってないんだ。ちょうどオーバーホール中」
「また?」
 空っぽの手をぶらぶらさせる魔理沙に、アリスは度し難いものを見る目つきとなった。
「地底に行かせたときも、それと秋に山の神様と喧嘩しに行ったときも、持たずに行ったんじゃなかったかしら。まったく、なんでそう大事なときに限って。頻繁にオーバーホールしなくちゃいけないのは、普段から大切に扱ってないせいよ」
「人形に火薬仕込む奴に言われたくないやい」


   §


 3rd day


 同時にモニタの表示が暗転している。真っ暗な背景に浮かび上がる何かの文字列。機体の各所に記されているものと同列らしき、見覚えのない異国の文字たち。
 その上に紫は広げた扇をかざし、束の間、文字を隠した。
「最も近い性質をしていた英語に、まずは変換するわね」
 そう紫があらかじめ教えてくれたにもかかわらず、扇がぱちんと音を立てて閉じたとき、その下から再び姿を現した文字が馴染みのあるものに姿を変えているのを見て、早苗は驚嘆の呻きを漏らさずにはいられなかった。
“WARMING UP NOW”
 何かのジョークかとすら思えるような、平易な英文。


   §


 4th day


「どちらが本当の狩る側か、勝負です」


   §


……………………

 

 

 

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