戦争があった。
 それはとても小さいものだったが、何度も何度もそんなことを繰り返していくうちに、いろんな掛け替えのないものを殺してしまった。
 その戦争に俺も巻き込まれ――否。巻き込まれるように、自分から踏み込んでいった。
 俺はこの町に住むみんなを守らなくちゃいけないから、自身の身勝手な欲望のために人間を平気で犠牲にするような魔術師と、戦うことを決めたのだ。
 俺の側には、融通の聞かない味方がいて、いつも俺を守ってくれた。俺はそんな自分が不甲斐なく、そしてその女の子が死ぬかも知れない傷を負ってまで戦うのが見ていられなくて、俺が守ってやろうと思った。
 だけど、戦うことを決めたのは俺だけじゃなくて、その女の子も同じこと。
 だから、二人で戦って。
 二人で、自分の中にある大切なものを守り抜いた。





凛とキャッチボール





 彼女――遠坂凛のことだが――無論赤いあくまともいう――が唐突に何かを提案することは、言わば宿命というか運命じみたものなのでこの際気にしないことにして。
 問題は――そうだ、問題が別にあること自体が問題かつ問題なのだ――、その遠坂が俺の眠る寝室に侵入し、あまつさえ俺に気付かないように布団に潜り込んで、そっと耳元に息を吹きかけてだな――。
「……しろ、う」
「あぁぁぁああぁぁぁあああ!」
 ……あの悲鳴は正直忘れてしまいたい。いや、過去を消し去ることは出来ないなんて言っていた俺だけど、それでも恥ずかしくて忘れたい過去ってのは幾らでもあるもんで――。
 その大半が遠坂凛によって生じたものなのは、彼女が比類なき赤いあくまであるならば容易に合点がいくというものだ。
 して、その遠坂が言うには。
「――士郎。キャッチボールしましょう」
 ということだった。
 ……なんで?


 駆り出されたのは冬木大橋を頭上に仰ぐ海浜公園。
 朝飯はちゃっかりウチで済ませた遠坂さんは、後片付けが終わるや否や引きずるようにして俺を連れて来やがった。藤ねえなんか拉致事件だって警察に電話しようとしたのを桜が必死で止めてたし。幸い、今日は日曜日なので単なる外出扱いになる訳だが。
 俺の前に立ちはだかる遠坂は、服装こそいつもと変わらぬ赤い兵装だが、その手に握るは一球のボール。もう片方の手に担うは一つのグローブ。見事なまでの野球スタイル。しかも俺の分まで用意してくれているもんだから抜け目がない。
「……オーケー。まずは理由を聞こうじゃないか」
「理由も何も、わたしは士郎と野球がしたいってだけだけど」
「説明になってねー」
「いいから、わたしの球を受けてみなさい!」
「いきなりかよ!」
 10m程の距離から容赦なく球を放り込む遠坂凛。うわ、伊達に中学時代は『赤き大魔神』って呼ばれてただけあってボール速えぇぇぇッ!
 ――視認さえ許さず、無論捕球さえ許さず、ボールはすぽーんと放り投げられたままに彼方へと飛んでいく。俺の後方遥か向こうで、ぽんぽーんと球がコンクリートに跳ねて転がっているのがわかる。
 ……だいぶ飛んだなー。
「士郎ッ!」
 やっぱり怒った。
「……なんだよー。そんなこと言われても無理なもんは無理だって。そもそも距離が近すぎるし……」
「いいの。そうでもしなきゃ目が覚めないんだから」
 それは遠坂の方だろうとは思ったが、言うとさわりがあるので自粛しておいた。
「とにかくっ! ボール1つしか無いんだから早く取ってきてよ」
「俺かよ」
 愚痴りながらも、転々と転がっていくボールを追いかける。
 日が高くなるにつれ、人の数も多くなる。それでもキャッチボールをするには問題ないスペースはある。ベンチに座って、物珍しそうにこっちを見ているカップルの視線を無視することさえ出来れば。
 ――いや。もしかして、こっちもいちゃいちゃしてる恋人みたいに見えるんだろうか……?
 その考えには、ちょっと背筋が寒くなった。
「……何よ。その目は」
「あ、何でもない。遠坂の相手をする奴は大変だなあと思って」
「……」
 お。遠坂が俺のことを指差してる。ガンドか?
「衛宮くんは、今わたしの相手をしてるんじゃなくて?」
 何故かはわからないが、遠坂がお嬢口調になっている。下手するとそのままガンド撃ちに移行しそうなので、先にボールを投げて強引に話を中断させた。
 何か言いたそうな顔で捕球する遠坂。距離は10m以上離れている。野球の心得が無いと、ボール届かせるのは少し難しくなる。
 それを、遠坂は難なく越えてみせた。
「――と。凄いな、遠坂は……」
 高めに放り投げられたボールを捕る。遠坂は、どうよ? みたいな顔でほくそえんでいる。全く、肉体的な欠点が無いのかあの赤いあくまは。
 ……無いかなあ。なにせあくまだし。
「早くしなさぁいっ!」
 吼えている。……たく、遠坂は人目を気にするという言葉を知らないのだろうか。今までの言動を見るに、感情が昂ぶると周りに目が行かなくなるという欠点はあるみたいだけど。
 言われたとおり、身を振りかぶって放り投げる。
 俺のボールは、遠坂の手前に落ちた。……どうも身体がなまっていたようだ。
 と、その球をワンバウンドで受け止めた遠坂は、何を思ってか山なりではなく地面とほぼ平行な軌道を描く投球をしてみせた。
 ――地面と平行。つまりボールにそれなりの加速がついており、それなりの破壊力があるということである。
 しゅごぉ! とかいう効果音がしないのがおかしいぐらいの球速で、ボールは俺のグローブ……というよりむしろ身体めがけて飛んでくる。容赦なし。躊躇なし。後先考えなし。
 両手で構えたグローブの中心で、それこそ遠坂のボールがこれ以上ないくらいに愛を叫んだ。
「――づっ!」
 身体がズレる錯覚。実際の球速は時速130kmもないに違いない。しかし真正面から球を受け止めた者からすれば、ただ『速い』『近い』という感覚しか捉えることができない。慣れない人なら、それが『怖い』という感情にすりかわってしまうことも多いだろう。
 ……別に、俺はそんなに詳しい訳じゃないし、特に怖いとも感じなかった類いの人間だけど。
 怖いって感情は、あのとき存分に味わったんだし。
「いてて……。ちょっとは手加減しろよな……」
 お返しとばかりに、こっちもボールが地面と平行になるような速球を投じる。
 遠坂はそれをいともあっさり受け止め、捕球から数秒の間も掛けずに投球動作を開始した。
 ――だから、それが速いって言うんだよ!
「――っ!」
 足を踏み込んで、心なしか距離を縮めながら渾身の一球を投げ込んでくる。段々と気分が高揚してきたのか、球の勢いもさっきのものより増している。
 ……つーか、これキャッチボールじゃないって。
「士郎!」
「わかったよ……」
 ボールを催促する遠坂に、少しだけ疲れた息を漏らす。
 本当に疲れた訳じゃなくて、これは我がままなお姫様の道楽に付き合う執事のような、なかば親愛の情が伴った感情のひとつ。
 俺は腕を振りかぶり、白い球に諸々の気持ちを込めて球を投げた。


 そういえば――。
 あの別れで、俺は結局「ありがとう」も「さようなら」も言えていなかった。
 わかり切った結末ではあったけれど、だからこそ別れの言葉を口にするのは躊躇われた。でも、こうして言えなかったことが心に引っかかっている。皮肉なものだ。
 後悔があるとすれば、多分それくらいで――。
 本当はずっと一緒に居たかったのだけど、それが叶わないのは知っていたから。お互いに美しい想いを抱いたままで別れる道を選び――。
 自分がかつて歩んでいた、自分がこれからも歩んでいく道を進むことに決めた。
 その決断を受け入れた彼女は、最後の瞬間、俺を見て優しく笑っていた。


 キャッチボールは佳境に入り、遠坂の息も上がってきた。こっちも余裕があるとは言いがたい。ベンチ際のカップルもいつの間にかいなくなっている。
 確かに、これはいちゃついてる恋人っていうより、試合登板直前の肩慣らしって感じだもんな。さして揶揄するに値しない。
 ――遠坂の放ったボールが、初めて俺の前でワンバウンドした。手が滑った、というのではなく、単純に握力の限界に達したと見るべきだろう。そこまで本気で投球を続けていた遠坂、近々ドラフト会議で名前が呼ばれるんじゃなかろうか。
「……ぁ、はぁ……。ったく、このわたしもなまったもんね……」
 肩で息をしている遠坂さんだが、どうやら全盛期の力を発揮してはいないらしい。全く底が知れない。
 ふぅ、と気前よく息を吐き、グローブを外して近付いて来る。高くなってきた日差しと零れる汗とが相まって、不意打ち気味に遠坂が学園のアイドル(であったと言うべきだろうが、それは俺の中での認識であって学園全体の評価ではないので、ここでは現在進行形のアイドルとする)であることを思い知らされる。
「――で、どう?」
「な、なにが?」
 別に心を見透かされた訳でもないだろうが、ちょっとドキッとした。特に、俺の中ではアイドルでもないってのがバレるとまずいところである。
 そんな俺を見て、やっぱり解ってないのね、なんて諦め顔で息をついた。
「すっきりしたのか、ってことよ。たまには義務とか仕事とか関係なしに汗をかくのもいいもんだと思わない?」
 どう? と再び問い掛けてくる。
「――それは、そうだけどな」
 確かに、すっきりとは、したと思う。
 でも、綺麗さっぱり忘れた訳ではないし――。
 初めから、忘れないと思っていた記憶でもあることだし。
 遠坂は、それを知っているのだろうか。
 俺のこと、彼女のこと――。
 その繋がりと、その結末をどう捉えているのだろうか。
「……なあ、遠坂――」
「ストップ」
 言いかけて、すぐさま遠坂のグローブに遮られる。鼻っ柱に当たってちょっと痛い。
「士郎。もしかして、ヘンなこと言おうとしてない?」
「……いや」
 控えめに否定する。遠坂は、不満げではあるが一応納得してくれたようだ。
「そう――。もし、士郎がヘンなこと言ったら超至近距離で死球を与えてあげようかなとも思ったけど、違うんならいいわ」
 おもむろに指を鳴らす遠坂さん。あながち冗談でもなさそうだから心臓に悪い。ちなみにデッドボールで人が死ぬこともあるのを遠坂さんは知っておられるのでしょうか。知ってて言ってるのなら、もはや俺に出来ることは何もない。
 遠坂は俺の苦悩も知らず、グローブを脇に抱えたままで続ける。
「最近、また無理してるみたいだし。人のためもいいけど、自分のために身体を動かすことも、ね。
 まあ、士郎の家だと準居候みたいな人が大勢いてややこしいから、ここに連れ出してきたってのもあるんだけど。中庭でキャッチボールしたら、藤村先生が乱入してきてえらいことになりそうだし」
「あー……」
 藤ねえと野球。そしてタイガー。
 それら三つの要素を掛け合わせると、何かしらとんでもないものが生まれそうな確信はあるのだが、想像してみるだけも恐ろしいのでやむなく思考を中断した。
 今現在、俺の家に定期・不定期を問わずに訪問してくる人間は4人。藤ねえこと藤村大河、藤ねえの家で世話になっているイリヤ、後輩の間桐桜、そして目の前で呼吸を整えている遠坂凛である。
 彼女は先の戦争で共に戦った友人であり、俺なんかでは手の届かない場所にいる凄腕の魔術師だ。それなのに、こうして人に手を焼いたりもする、清々しいくらいにイイ奴なのである。
 だからこそ、遠坂の化けの皮が剥がれた後も、遠坂に少なからず憧れのようなものを持っているのだし――。
 彼女の生き方が、俺には決して選ぶことの出来ないものだから。
 人のためだけじゃなく、自分のために生きることが出来る彼女の人生に。
 セイバーとは違う種類でありながら、その輝きは眩いまでに美しい人生を。
 俺は、綺麗だと思った。
 一方、俺とは対照的に、遠坂はいともあっさりと何事かを口にする。
「まあ、要するにこれもデートみたいなものだからねえ。桜たちがいたら問題あるでしょ」
「……え?」
 ……遠坂が何か変なことを言った気がする。
「聞こえなかった? デートよデート。男と女が寄り添い合って本音と本音とちょっと建前をぶつけ合う清純な儀式」
「後半かなり嘘くさいな……」
 しかし、やっぱり聞き間違いではなかったようだ。俺と、学園のアイドル(仮称)遠坂凛が、デート。
 いや、こんな本音とは言えるけど白い球を投げあうことがデートのカテゴリに入るとは思えないし、一緒に汗をかくってのも変な意味じゃなくてちゃんとした健全たるスポーツによる発汗作用だし……。って、なに言ってんだ俺。
「……落ち着くんだ、遠坂。なんでそんなに自暴自棄になってるかは知らないけど、ボールに当たるくらいならちゃんと新都の教会に行って懺悔して来るんだ」
「罪を犯した覚えはないわよ」
 腰に手を当てて、ふて腐れる。しかしそれ以上反撃してこないのは、自分でもいろいろと思い当たるフシがあるからだろうか。軽犯罪法に触れるやつとか。
 ……ピンポンダッシュ?
「信号無視もありかな……」
「なんか失礼なこと言ってない?」
「別に何も」
 ふるふる首を振りながら言う。むー、と口を尖らせてはいるが、やはり追撃はしてこない。どうやら的を射てるっぽい。
 ……こうしてる分にはデートみたいではあるのだが、俺の手にあるのは新品のボールで、遠坂の手にあるのは使い古されたグローブである。この胸のドキドキはきっと愛とか恋とかそういうんじゃなくて、飛んだり跳ねたり投げたり捕ったりしているせいに違いない。興奮する方向性が真逆すぎる。
 でも、まあ。
 その意味では、遠坂の言う通りでもある訳だ。
 思い切り集中している時には、余計なことを考えずに済む。いつも頭の中に渦巻いている瑣末事が綺麗さっぱり片付けられて、進むべき道の視野が広がったような気がする。無論、彼女のことはこれからもずっと残るけれど。それもまたきちんと整理されて、引き出しの中に大事に仕舞えている。
 全く――。
 本当に、遠坂にはかなわない。
「――よし。それじゃあ再開するか」
「え……。もう、いいの?」
「ああ。別に本気で投げ合う必要はないからな。一応、キャッチボールっていう触れ込みだったし。遠坂は最初っから飛ばしてたけど」
「……仕方ないじゃない。昔の血が騒いだんだから」
 末恐ろしい血である。心底遠坂と同じ中学でなかったことを嬉しく思う。
 まずは俺から球を投げる。遠坂はグローブをはめていなかったから素手で捕る。そして素早く片手にグローブを収め、距離を取るべく俺に背を向けた。
 その直前、肩越しに俺を見る。その眼が、鋭く光っていた。
「――――魅せてあげる」
 ――――赤き大魔神と謳われた、この腕の閃光を――――。
 そんな、仰々しい宣言を聞いた。
 そして俺は思い知ることになる。
 文字通りに、思い通りに、遠坂が手加減していたという事実と、自らに課していた枷を解いた時の、真の実力を。
 その、狂おしいまでに光り輝く赤い閃光を。


 ……本当、何のマンガだよこれ……。


 太陽は頂点から転げ落ち、腹部もしきりに空腹を訴え始めている。
 時刻は午後1時。午前9時あたりからずっとキャッチボールを続けていたのだから、これを酔狂と呼ばずして何と呼ぶ。今更ながら、カップルが早々に立ち去ったのは遠坂に秘められた闘気を悟ったからなのだと気付く。恋する女は勘が良いという民間伝承は真実であったか。
 エンジンが温まってきたせいか、遠坂はいまだ余力を残しているようにも見える。むかし取った杵柄(きねづか)を、どうにかこうにか記憶の中から引っこ抜くことに成功したのだろう。できれば控えめにお願いしたかったが、抵抗する余地もなく俺の身体には無数の擦り傷が出来上がる羽目になってしまった。
 ……カマイタチって本当にあるんだな。びっくり。
「あら、もう限界かしら」
 したり顔で言ったりする。俺は、息も絶え絶えになりながら、首をかくかく上下させる。
 勝ち誇ったように唇を歪ませて、左手からグローブを外す遠坂。俺もそれに倣う。
「どう? いい気分転換になったでしょ」
 転換というには激しすぎる運動ではあったが、確かにその通り。しばらく白い球が無尽蔵に襲い掛かっている悪夢を忘れることは出来そうにないな。
 心臓が内側から俺の胸をノックし続けているから、満足に返答することもままならない。しかしそんなことはお構いなしに、遠坂は話を続ける。
「……ちゃんと聞こえてる? まあ、聞こえてないならそれでもいいんだけど」
 ……ああ、聞こえてる。ただ、ちゃんと答える気力がないだけ。
「正直、わたしもここまで本気を出すつもりは無かったんだけどねー。ほら、士郎が予想以上に巧かったからさ、つい調子に乗って」
 はは、なんて笑ってみせる。個人的には、あまり笑い話にはしてほしくないんだが。
「胸を張りなさい。あなたはしっかりやってるんだから。
 ただ、もうちょっと――――自分を大切にすること。いいわね?」
 ――――ああ。
 頷く。通じたかどうかはわからないけど、首を縦に振って遠坂の言葉に同意した。
 同じ言葉を、いつか誰かから聞いた気がする。
 似たような言葉を、かつて誰かに言った気がする。
 全く違う彼女と彼女が投げかけた言葉を、俺はただ受け入れて。
 結局は、その約束を守れないのかもしれない。俺が選ぶ道は曲がりくねり捻り歪み淀み尖っている。そこを渡るには傷付くしかない。守るためには傷付くしかない。
 だけど、それでも――。
 嬉しいことに、偽りはなかった。
「……うん」
「あ、ようやく落ち着いた?」
「……ああ、なんとか」
 そう、と遠坂は言って、おもむろにお腹をさする。多分、そういうことなんだろう。
「……昼は、ウチで食うか?」
「え、いいの?」
「どうせ、有り合わせしか出来ないけどな……。全力は尽くす」
「そこまでしなくてもいいけど。たったいま無理するなって言ったばっかだし」
「……そうか。なら、遠坂も手伝っ――」
「手伝わないけど」
 手伝わないんかい。
 つっこみを入れたいところだが、余計に疲れるのでやめておいた。悲鳴を上げる筋肉に折り合いを付けながら、海浜公園の出口へと向かう。
 ――と。そういえば、言い忘れていた。
 俺はゆっくりと振り向き、後ろからついて来る遠坂に目を合わせる。
 何をするつもりなのかわからないらしく、何回か瞬きを繰り返す遠坂。
 その明朗快活で学園アイドルでお人好しな友人に向かって、俺は、
「ありがとうな。誘ってくれて」
 と言った。
 しばらく、何を言われたか理解に手間取っていた遠坂も、
「――うん。そう言ってくれると、こちらとしても嬉しい限りよ」
 素直に喜んでくれた。
 俺も、そんな遠坂の顔が見れて嬉しかった。





 家に帰ると、玄関に野球帽とユニフォームに身を包んだ藤ねえが待ち構えていたことはまた別の話で。
 そして、桜が何かもの欲しそうに野球のボールを見詰めていたのも、また別の話だった。





−幕−








・「空を見る」の外伝にあたる話です。
 推奨曲は Bump of chicken の「キャッチボール」。
 そのままです。



SS
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2004年8月18日 藤村流継承者

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