半熟な月
101.同情
――朝。
遠坂「……おはよ〜」
士郎「うぉわ! ……なんだ、遠坂か」
遠坂「なんだって、何よ……あ〜、とにかく、牛乳もらうわよ」
士郎「……なぁ、遠坂っていつも朝には牛乳なのか?」
遠坂「――ぷは――。ん……ま、大体はそうね。これを飲むと一発かな」
士郎「ふぅん……それは、どこかが大きくなるようにとの願掛けとか――いや、なんでもない。ごめん」
遠坂「何もしてないんだから、土下座して謝るのやめてくれる?」
102.洗脳探偵
翡翠「――志貴さま。昨日お部屋の掃除をしておりましたら、ベッドの下にこのような書物が――」
背中から、ある一冊の書を取り出す翡翠。
志貴「ち、違う! それは有彦がどうしてもって……!」
翡翠「…………」
志貴「だから違うんだ! そりゃ女の人の身体に興味がないと言えば嘘になるさ! でも仕方ないとは思わないか!? だって思春期真っ盛りなんだから、少しぐらい心の隙間というかため息の後先とかそのへんの余裕があっても……!」
翡翠「……志貴さま、先に申しておきますが、わたしが発見しましたのは『優しい妹は君のモノ!』という趣旨の測りかねる書籍だけなのです」
志貴「……あ……」
翡翠「ところで、先程から看過できない話題が上っていたような気がするのですが……」
志貴「あの、翡翠!? ちょっとずつ歩み寄るのはどーかと……って、その前にどうして指をくるくる回してるのか遠野志貴はとっても不思議なんだけd$fd☆l;□!?」
103.『シスタープリ■■ス・リピュア』
秋葉「……なるほどね。兄さんは優しい妹がお好みなのですね」
志貴「連続!? いやちょっと俺には再生時間が必要だってそのね熱いッ!!」
104.『あなたの右手のおてつだい』
琥珀「そんな本ならわたしの部屋にたくさんありますのにー」
志貴「……なんで?」
105.『初めてでもわかるS××講座』
アルク「そんなコトならわたしが全部やってあげるのに〜」
シエル「お待ちなさい」
106.『レッツメシアン』
シエル「そんなカレーならいくらでも作ってあげ」
志貴「言ってません」
107.本当はありえたかもしれない未来
葛木「……訊くが、それは優しくか? それとも手荒くか?」
一成「……手荒く」
キャスター「――ちょっとそれ私の役どころ――ッ!?」
遅かったみたいです。
108.長所
真アサ「フ……こう手が長いと、痒いところに余裕で手が届くな」
109.死角
真アサ「か、かゆ……右の肘が痒い……!」
110.ちょっとツボ
――シュライン前。
シオン「……遅いッ!」
志貴「うわぁぁぁ!」
血に染まるエーテライト。勝負はついたとばかりに佇むシオン。
シオン「……(これが本当の赤い糸……フッ)」
志貴「……(うわ、血を見て笑ってるよ……)」
111.虫歯/命中率100
ギル「む……」
ランサー「どうした、頬おさえたまましかめっ面しやがって」
ギル「……貴様に語るべきことでは無い。我の痛みが槍兵風情に理解できる筈が無かろう」
ランサー「まぁ、だいたい予想は付くがな。どーせ虫歯かなんかだろ? 世間がどうのこうの言っておきながら、世間の食いもんで自身の一部が削られるたぁ滑稽だよなあ」
ギル「ぬぅ……。雑兵が……」
ランサー「だがまあ、気に食わないとはいえテメエとは少なからぬ縁だ。場合によっちゃあ、その虫食いを治してやらんこともない」
ギル「……何か、裏がありそうだな」
ランサー「別にねえよ。テメエに貸しを作っても仕方ないしな」
ギル「む。なれば、癪ではあるが我に治療を施すことを許す」
ランサー「ん。じゃあ、さっさと行くぜ? 口開けろ。――刺し穿つ死棘の」
ギル「待て」
112.虫歯/根こそぎ
志貴「あた、あたたたた……」
シオン「どうかしましたか、志貴」
志貴「あ。ちょっとさ、虫歯みたいで――」
シオン「(しゅぴ)――それなら」
志貴「合理的かも知れないけど、お願いだから自粛してくれ」
113.虫歯/菌
臓硯「……ある意味、儂も虫歯?」
桜「というか虫そのものだと思います」
114.虫歯/笑うに笑えません
桜「むしろ、わたしの存在自体が虫歯?」
ライダー「カルシウムも多分に含まれてそうですしね」
桜「それはあなたもでしょ」
胸の辺りを意識しながら。
115.願い/○○じゃない先輩なんて先輩じゃない!
志貴「……先輩、俺はどうしても、先輩に訊かなきゃいけないことがあるんだ」
シエル「な、なんですか? いやに改まっちゃって」
志貴「もしかしたら、気分を悪くするかも知れない。でも、俺は――」
シエル「……わかりました。聞きましょう」
ごくり、と息を飲む音が聞こえる。それは男と女、どちらが嚥下した音だったか。
志貴「……先輩は、戦ってるよな……?」
シエル「はい」
志貴「……先輩は、飛んだり跳ねたりして必死に戦ってるよな……」
シエル「はい」
志貴「なら、戦ってる時はどうして眼鏡を掛けてくれないんだ?」
シエル「……はい?」
116.願い/便利力
志貴「ついでに訊きますが、どうあってもスカートの中身は見せないんですね」
シエル「はい。でもまあ、私が努力しなくても抑止力が働いてくれますから」
志貴「へぇ……(……おのれ、抑止力め……ッ!)」
117.願い/世界の優しさ
アルク「それってつまり、シエルのスカートの中身は世界を破滅に至らしめるほどの概念ってことなの?」
シエル「…………違いますよ。きっと」
118.曲解/メシ時だったら申し訳ない
アルク「ねーねー、志貴はなんで麺類しか作れないのー?」
志貴「それはな。簡単でなおかつ一定レベル以上の味と速さが提供できるからだ」
アルク「ふぅん……。要するに、志貴は早漏ってこと?」
志貴「なに聞いてたんだおまえ」
119.曲解/比較しようがない
志貴「だいたい、そんな言葉どこで覚えたんだよ」
アルク「んーとね、そこらを歩いてた赤い髪の人が、『志貴は早漏だから早めに見切りを付けた方がいいっスよ』とかなんとか言ってたから、ちょっと辞書で調べてみた」
志貴「……あいつかよ」
アルク「やっぱりそうなの?」
志貴「違う。…………多分な」
120.曲解/戯れ言だと信じたい
志貴「その前に、有彦はなんでそんなこと知ってるんだ……?」
121.略奪の薔薇
志貴「あれ? ドライフラワーなんて飾ったんですね」
琥珀「そうなんですよー。花はすぐ枯れちゃいますから、わたしの庭に植えようとしたら翡翠ちゃんが『それだけはやめて』って言うし……」
志貴「……まあ、それは仕方がないと思う」
琥珀「別に特殊な肥料を与えたりする予定は無かったんですけどねー。でも、これはこれで綺麗ですから」
志貴「そうだね。……ところで、これどうやって乾燥させたんです?」
琥珀「それはですね、秋葉さまの手を借りて少しずつ――」
志貴「……やっぱいいや……」
徐々に熱を奪われていく花を想像して、なんだか悲しくなった。
122.水分に逃げ場なし
幹也「……あれ、いつの間にドライフラワーなんか飾ったんですか? 橙子さんの趣味じゃありませんよね」
橙子「確かにな。それは鮮花が持ってきたものだ。魔術の鍛錬のついでにな」
幹也「はぁ。焼いたんですね」
橙子「あぁ。焼いた」
123.タイ産
桜トゥルー後。
凛「あんた、身体は本当に大丈夫なの?」
士郎「特に問題はないよ。動かそうとすれば動くし、心拍数も血圧も正常。魔術に関しては、まぁぼちぼち慣らしていくさ」
凛「そう? なら、別にいいんだけど……って、ちょっと待った」
士郎「どした」
凛「首のところに、なんか書いてあるわ」
士郎「え? 今まで気が付かなかったぞ。本当にそんなの書いてあるのか?」
凛「嘘ついてどうすんのよ」
士郎「そうだよなあ……。で、なんて書いてあるんだ?」
凛「……えーとね、文章じゃないみたい。『綿50% ポリエステル50%』だって」
士郎「……品質表示?」
124.合成洗剤でも洗えます
凛「あんたって意外と安物だったのね……」
士郎「ツッコミどころはそこじゃないぞ」
凛「わかってるわよ。燃やすと有害物質が出るから気を付けろってことでしょ?」
士郎「燃やすな」
125.名前/実感
コペンハーゲン内。
士郎「ネコさんの名前って漢字でどう書くんですか?」
ネコ「あー、ケモノへんに苗って書くんだけど」
士郎「直球ですか。捻りがありませんね」
ネコ「名前に捻りなんかいらないって。藤村みたいにされてもアレでしょ」
士郎「……そうですね」
126.名前/球根
take2。
士郎「ネコさんの名前って漢字でどう書くんですか?」
ネコ「あぁ、根っこを縮めて……」
士郎「根子?」
ネコ「うん。親が、いつまでも恨みを根に持つ子であってほしいとの願いをこめて――」
士郎「嫌なネーミングですね……」
127.名前/あるし
take3。
士郎「ネコさんの名前って……」
ネコ「実は――私の名前はまだ無いんだよ」
士郎「やっぱり猫ですか」
128.名前/逆ギレ英語教師
士郎「ということは、飼い主の先生役は藤ねえになるんだな。適役っていうか、なんていうか……」
129.名称/実の親
士郎「唐突ですけど、店の名前の由来はなんですか? コペンハーゲンって、なんとなく意味ありげですけど」
ネコ「それは店長がハゲだから」
士郎「言っちゃったよ」
130.名称/デンマーク
士郎「ちなみにですけど、コペンハーゲンがどこの都市かは知ってますよね」
ネコ「…………ベトナム?」
士郎「流石に、経営してる店の名前がどこから来てるかぐらい把握してないと」
店長「……わかった、アルゼンチン!」
士郎「全部外れですかい」
131.名称/新婚さんはもういない
蒔寺「おーい、三枝(さーん」
三枝「いらっしゃーい! じゃ、ないですよ!」
蒔寺「ノリノリじゃんか」
132.名称/あの頃は若かった
士郎「昔、間桐(を間桐(って読んで恥かいた経験があるけど、その読み方もあながち間違いじゃないってことに気付いたよ」
凛「それは良かったわね。――で、相槌としては正しいのよね?」
133.名称/羞恥心
柳洞寺はええ霊地だし、キャスターもいるってことで、用心棒と化している葛木先生を狙いに来る死徒がいないとも限らんだろという設定。
死徒「――はじめまして、だったかしら。かつらぎ先生?」
葛木「あぁ」
死徒「……あら、話よりいい男ね。だったら血を吸う前に愉しむのもいいかも知れないわね。貴方はどう思う? かつらぎ先生」
葛木「あぁ」
死徒「もっとも、生気がないから血液自体はそんなに美味しくないかも。かつらぎ先生は、どういう終わり方を迎えたい? 出来るだけリクエストには応えるつもりだけど」
葛木「あぁ。その前に、『かつらぎ』ではなく『くずき』だと言っておこう」
死徒「…………は、恥ずかしくなんかないわよ」
葛木「あぁ」
死徒「ほ、本当だからね!?」
葛木「あぁ」
134.名称/ネタです
士郎「藤ねえのお父さんの名前ってなんていうんだ?」
藤ねえ「んーとね、たしか『しょうが』だったかな……?」
士郎「……まさか、すりおろして食するアレじゃないよな」
藤ねえ「うぅん、違うよ。ちっちゃい蛾の方だもん」
士郎「小蛾!?」
135.名称/泣くに泣けん
take2
藤ねえ「えーとね……。たぶん、『はんが』だったと思う」
士郎「なんで自信なさげなんだよ。まぁ、それはいいとしても、はんがって木版画とか銅版画とかの……?」
藤ねえ「違うわよ。士郎も洗ったシャツを干すときによく使うじゃない」
士郎「……ハンガーか……」
136.名称/藤村正敏(仮)
take3
藤ねえ「ていうか、おとうさんって婿養子だから名前はそんな奇抜じゃないのよねー」
士郎「……へ? じゃあ、今までのは……」
藤ねえ「……んー、ノリ?」
士郎「ノリで蛾とか日用雑貨品呼ばわりするなよ」
137.名称/ノー悪意
士郎「……ん? ということは、藤ねえのお母さんの名前の方が――」
藤ねえ「……そう。藤村の家に産まれたなら避けられない運命。またの名を、『Fate/stay name』の儀式……」
士郎「まぁそのへんはどうでもいいな」
藤ねえ「ちなみに、stay name だと新刊のネームが出て来なくて困るみたいな意味合いもあるのよねー」
士郎「だからそのへんはわりとどうでもいい」
藤ねえ「そんなこんなの紆余曲折で名付けられた、わたしのお母さんの名前は、なんと――!」
士郎「そ、それは……(ごくり)」
沈黙が両者を隔てる。それは長いようで短く、短いようでやっぱり短かった間。
藤ねえ「それは……………………何だったっけ?」
士郎「……今のが一番ひどいな」
138.精肉戦争
シエル「知ってますか? なんと北海道には熊や鹿のレトルトカレーがあるんですよ」
少女は言う。視線の先にあるのは鹿。四足を踏み締め、野獣が応える。
エト「だ、だから? 私にそれを言うことに何の意味があると……ま、まさかあの時邪魔に入ったのはそのための……!」
シエル「察しがいいですね。しかし、その獣に相応しくない賢しさが己の身を滅ぼすことになると、なぜもう少し早く気付けなかったのか……それだけが、残念です」
エト「く……! 折角あの3Kの職場から脱サラしたのに、こんなところでじっくりコトコト煮込まれては同士に申し訳が立たんわい!」
シエル「食材が、果敢にも捕食者に刃向かいますか。……いいでしょう。それならば、貴方の前に立ち塞がったのが私であったことに、少しは意味があるというものです……!」
交錯する閃光。生き延びようとする迸りが死線を煌びやかに演出する。
かたや肉、かたやカレー。しかし、そのどちらが浅ましいかなど、観客のいない戦場では誰にも見極めることなど出来ず――。
ズガッ!!
志貴「たべぎゃ!?」
秋葉「兄さん! そのような書物に傾倒してはいけませんとあれほど……」
志貴「……あのさ、秋葉。注意するにしてもキックは駄目だと思う。後頭部は特に」
『エクソシスターシエル 〜鹿は鹿に、肉は肉に〜』より
139.実践派
真アサ「……ハァ、ハァ……(ドクン、ドクッ!)」
慎二「いや妄想心音ってそういうことじゃないだろ?」
140.どうでもいい
士郎「セイバー。俺は今からどうでもいいことを言う。心しないで聞いてくれ」
セイバー「はい」
士郎「……『聖女凌辱』って、『公序良俗』に似てるよな……」
セイバー「そうですね」
士郎「どっちも言いにくいしな……。言ってることは逆なのに……」
セイバー「そのようですね」
士郎「……どうでもいいけどな……」
セイバー「どうでもいいですね」
141.愚痴
ななこ「……はぁ。そうですよねえ。マスターは基本的にわかってくれませんよねえ。わたしたちが実はとんでもなくえらーい生き物だってことに……。え、そっちはそうでもない? ボクは男だから、女の人に乗ってもらえるだけで興奮するんだ――て、な、なんて不潔! ……でもないですよね、わたしら馬なんですからねー。あはははは」
ななこ(マスター・シエル)とペガサス(マスター・ライダー)の雑談。
142.図星
ななこ「しかも、マスターは精霊たるわたしの主でありながら、自分は志貴さんという男の方の上に乗っているという根本的な矛盾が――て、なななんですかこの波動はぁ……!?」
143.喋れん訳でもない
レン「にー」
志貴「猫バージョンだと鳴くのにな」
144.使い魔だし
レン、キャットフードを食す。
レン「にー」
志貴「……猫なのに、牛の肉を食べるんだな」
145.イージートラップ
只今、ストライキ決行中。
秋葉「……全く、翡翠も琥珀も調子に乗って……!」
走り回って乾いた喉を潤すべく、手元にある輸血パックにストローを挿す。
秋葉「今度会ったら本当に――って、すっぱいわよッ!」
翡翠「梅ジュースです」
琥珀「ありがちなトラップですから、見抜けなかった秋葉さまが悪いんですよー」
146.味覚スクランブル
只今、ストライキ続行中。
秋葉「……全く、翡翠も琥珀も調子に乗って……!」
喉の渇きを潤すため、手元にある輸血パックにストローを挿す。
秋葉「今度会ったらただじゃ――って、おいしい」
翡翠「トマトジュースです」
琥珀「翡翠ちゃん。あんまりダメージを与えてないみたいですよ」
147.存在に耐えられない軽さ
幹也「学人(……。おまえ、この時代に生まれたことを悔やんでもいいんだよ」
学人「殴るぞ?」
148.言っちゃった
鮮花「――ねえ。式って男なんでしょう?」
式「そうだ」
幹也「うえぇ!?」
149.式はちゃんとした女の子です
take2
鮮花「――ねえ。式って男なんでしょう?」
幹也「そうだよ」
式「……肯定するな」
橙子「黒桐はそうであって欲しいのさ」
式「しみじみ語るな」
150.どうでもいい2
士郎「セイバー。昨日に引き続き俺はどうでもいいことを言う。右の耳から左の耳に聞き流すつもりで聞いてくれ」
セイバー「はい。了承しました」
士郎「……アオザキって、カタカナ表記にするとベトナムの民族衣装であるアオザイに見えるよな……」
セイバー「えーと……あ、はい。そんな感じですね」
士郎「まあ、その人には会ったことないんだけどな」
セイバー「凛から聞いただけですよね」
士郎「あと、ザーサイにも似てるんだよな……」
セイバー「ですね」
士郎「……まあ、どうでもいいんだけどな……」
セイバー「どうでもいいですね」
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